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2015年04月10日

情報を疑え。真実を見抜け。そのための努力を惜しむな。

先月、3月にあった東京大学教養学部の卒業式で、
学部長の式辞がネット上で話題となっている。

東大卒業式、ネットで激賞 伝説の格言の内幕明かし、コピペ情報に警鐘 信州大あいさつと一緒に話題に (withnews) - Yahoo!ニュース

式辞の全文

平成26年度 教養学部学位記伝達式 式辞 - 東京大学 教養学部




この中の一文を紹介しよう。


「・・・(前略)・・・
情報が何重にも媒介されていくにつれて、最初の事実からは加速度的に遠ざかっていき、誰もがそれを鵜呑みにしてしまう。そしてその結果、本来作動しなければならないはずの批判精神が、知らず知らずのうちに機能不全に陥ってしまう。ネットの普及につれて、こうした事態が昨今ますます顕著になっているというのが、私の偽らざる実感です。
しかし、こうした悪弊は断ち切らなければなりません。あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養学部」という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる「教養」というものの本質なのだと、私は思います。
・・・(後略)・・・」




「善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせます」

インターネット上に溢れる情報。
溢れる情報をなんでも鵜呑みにしていては、
真実を見誤ってしまう。

リツイートする前に立ち止まって考えてほしい。
この情報は真実なのか?本当の話なのか?と。



そして、テレビや新聞などから流れてくる情報。
ちゃんとした媒体からの情報だと、
多くの人は無条件にそれが真実だと思い込む。

しかし、それらの情報を流すのは人間であり、
本質はリツイートとなんら変わらない。




大手の新聞社だからといって、
それがすべて正しいとは限らない。

なんらかの情報に接したときに、
「それは本当の話なのか?」と疑い、
己の目で確かめること。

それが大切なことだと。




=================

上記のニュースを見たときに
とあるニュースを思い出した。


平成26年4月4日に、
日本人間ドック学会が、
血液や肥満度、血圧などの基準値を
広げる新基準を発表したとの記事。

大手の新聞社やテレビが大々的に取り上げて、
基準が変わるぞーーと。



多くの人はこれをそのまま鵜呑みにしてしまい、
現場は大混乱に陥った。

「基準が広がったから、自分のデータは正常範囲。
だから、もう治療する必要はない」などと治療を止める患者も出たほど。

うちの親ですら、
「今度、基準が変わるんでーー」と言うのだから・・・・(*○*;)





そんなこんなで他の学会から反論記事が出たりと
大変な事態になったのだが・・・・



何かがおかしいと感じた私は、
日本人間ドック学会の発表した報告書を読んだ

新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会と健保連による150 万人のメガスタディー(pdf)



題名だけみれば、
マスコミ報道そのものなのだが、
内容をしっかりと読めば、この報告書の意味するところは分かる。

いままでの検査基準は、
病気の人を対象にしたデータから基準値を割り出していた。

今回の研究では、
健康(と思っている人も含めた)な人のデータから割り出したもの。
しかし、現時点で健康であっても、そのデータの人たちが、
5年後、10年後も健康であり続けるという保障の無いデータであった。
だから、その後の追跡調査自体はこれからやるってな話になってる。

・・・なので、報告書を読めば、
まだまだ研究途上のデータで、
これで基準が変わるなんて思わない。

しかし、マスコミは題名をそのまま鵜呑みにして、
“新基準が示された”と大騒ぎしたのだ。

マスコミのミスリードが明らかな出来事であった。


事の顛末を纏めたサイト

「人間ドック学会、健康基準を緩和」は事実誤認 一般社団法人 日本報道検証機構ホームページ






===================


先月、こんなニュースが出回った。

がん患者の都道府県別傾向が判明。部位別に都道府県別の傾向が明らかになったと。
最近のニュースなので知ってる方も多いかと。

肺がんの割合は北海道や西日本で多い。
胃がんの割合は日本海側で高い。

・・・そんな興味深い内容のものであった。

その中でちょっと気になる部分。
がんの罹患(新たにがんと診断された人)率と死亡率の比較で、
"罹患率が高くて、死亡率が低い"のは長野県と広島県で、
これは"がん検診の効果"と考えられると。



サーっと聞き流していて、
「罹患率↑で死亡率↓」ってのは、
普通に考えると、早期がんの発見が多くて、
治療が早くできるので、がんによる死亡者が減少している・・と思った。

かといって、長野県や広島県でがん検診の受診率が高いのかというと、
顕著に高いというデータがあるわけではない。

ならば、がん検診の一次検診後の二次精検の精度管理が徹底していて、
早期がんの発見に多大な貢献をしているのではないか・・そんな仮説が頭に浮かんだ。




・・・でも、何かが引っかかる。
何ってのが分からないがどうも引っかかる。

それは本当にそうなのか?

こういうときはマスコミ報道を鵜呑みにせずに、
一次情報を洗い出さないといけないと思い、
報告書を読んだ。

全国がん罹患モニタリング集計 2011年罹患数・率報告(平成27年3月)- 国立がん研究センター(pdf)データ量多いよ




ちゃんと答えが書いてあった。




長野県については
「(前略)・・・本県では事業開始年より前の罹患情報を収集していないことから、事業開始後数年は集計上の罹患数が実態より多くなる(DCN(※)症例は死亡年を罹患年とみなすため)ことが要因となっている可能性もある・・・(後略)」

(※)
DCN(でぃーしーえぬ)
死亡情報で初めて登録室が把握した患者さん(死亡情報が登録された時点で届出がない)のこと。Death Certificate Notification (DCN)といい、生前の医療情報を遡り調査することが推奨されています。DCNが存在することは、届出が漏れており、生存しているために登録室で把握されていない患者さんが存在することを示唆し、DCNが高ければ登録の完全性が低い(登録漏れが多い)ことが推察されます。
参照:国立がん研究センターがん対策情報センターより



広島県では
「(前略)・・・全国と比較してIM比(※)が高いことは、広島県腫瘍登録では外来診療(生検など)も収集していること等が要因として考えられる」

(※)
IM比(あいえむひ(=ID比 あいでぃーひ) )
一定期間におけるがん罹患数の、がん死亡数に対する比。Incidence/Mortality Ratioといい、生存率が低い場合、あるいは、届出が不十分な場合に低くなります。一方、生存率が高い場合、あるいは、患者さんの同定過程に問題があり、1人の患者さんを誤って重複登録している場合に高くなります。現在のがん患者さんの生存率に基づいた場合、全がんで1.8〜1.9程度が妥当と考えられています。
参照:国立がん研究センターがん対策情報センターより





今回のデータは2011年症例が元になっている。
長野県では2010年からがん登録事業がスタートしているので、
それより前に罹患しているものはすべて死亡年=罹患年として処理されるので、
罹患数が増えるのは当然ちゃ当然な話。

広島県では外来診療でのがん情報も登録の対象となっていることが
一つの要因になっているようだ。

そもそもがん登録事業は各都道府県で
ルールも条件も異なるため、
素直にデータ比較しただけで、
安易にこうだ〜と結論づけることなどできないわけで。



================


マスコミ報道だけでは分からないこと。
それはちゃんと己の目で確かめる。
そうでないと、見誤ってしまう。

だから、徹底的に掘り下げる作業が必要となる。

まぁ、そんなことばっかりする暇なんてねーよっ
って思うかもしれんが、たしかにそうなのだが、
伝わってくる情報とはあくまで表面的なもので、
その裏側まで目を向けないと、
真実にたどり着けないってことも多いってこと。

だから、
「それは本当にそうなのか?」という気持ちを
常に持っておかないといけないよってな話ですっ
posted by すだち at 23:12| 岡山 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記>日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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